大規模木造建築 実績一覧

こちらでは、浅田設計室が携わった大規模木造建築をご紹介します。日本全国の施設を対象に、用途やご要望、土地柄に合った建物を設計しています。

福祉施設

ぷろぼの福祉ビル新築工事ーCLT工法による木造5階建て福祉ビルー竣工

ぷろぼの福祉ビル新築工事ーCLT工法による木造5階建て福祉ビルー竣工

第3回COFI中層木造建築デザインアワード受賞ウッドデザイン賞2016受賞第3回COFI中層木造建築デザインアワード受賞
ウッドデザイン賞2016受賞

撮影:プライズ 山崎浩治

ようやく竣工しました。
基本計画、補助金確保、CLTの材料特性・材料強度・接合部強度等の実験、構造評定、大臣認定、確認申請。
そして、着工、施工という長い工程を経て、ようやく完成です。
施工時もいろいろ苦労がありました。おかげさまでCLTに関しいろんなものが見えてきました。
1時間耐火建築としての手間もありました。集成材の梁にスリーブ貫通もしました。
時刻歴応答解析で、構造的に過大な応力を負担させていることに加え、屋上には設備機器をのせ、少しですが屋上緑化もしました。
当然、木造中層建築としてトップヘビーな建築となり、構造的にも苦労しました。
雨水を利用するため、雨水ピットを階段室下に設け、手押しポンプも設置しました。
1時間耐火で木構造体(CLT)が隠れてしまいますが、どうにか一部水平力しか負担させない壁を設け、CLTを現しにしました。
外部壁・軒には吉野ヒノキを、2~5階内装壁には吉野スギ、床には南部クリを使用しました。
1階の食堂壁には吉野(奈良)県産の広葉樹・針葉樹12種を用い張りました。床はウリンです。
1階の食堂の吊り下げの照明器具のカバーも吉野スギで製作しました。
1時間耐火で構造体が隠れてしまいましたが、仕上げ材ではできるだけ木を使いました。
CLTによる外壁の厚みは仕上げから仕上げまでで約390mm,厚い木質の壁に囲まれた空間は、他の構造では感じられない、なんともよい空気をしています。素晴らしいです。
本当に、施工に携わったみなさん、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。

『木造建築=木(構造体)をみせるもの』 という日本人独特の考えに固執せず 木造を自由に発想し、大いに木を使って木造建築を楽しみたいと思います。

ぷろぼの福祉ビル新築工事 上棟

ぷろぼの福祉ビル新築工事 上棟

撮影:浅田設計室

さんざん苦労した基礎、1階のRC部分の施工が終わり、2階RCスラブへのアンカーセット、コンクリート打設後、いよいよCLTの施工が始まります。
今回は、単に、CLTを耐力壁・壁面材のみの使用ではなく、CLTに軸力および水平力とも負担させているため、構成される壁はすべてCLTになります。
2階RCスラブへのアンカーセットはとにかく大変でした。軸組工法の柱脚のベースプレートのアンカーセントでも精度を出すのが大変です。今回はCLT壁の鋼台のアンカーセットです。柱下の小さな面ではなく、CLT壁のあるところすべてのアンカーセットで
壁の長さ分の精度が要求されます。柱脚の場合でもテンプレートを用い精度を出しますが、今回も当然テンプレートを必要長さ分、作成しセットしました。このセットも一苦労なうえに、コンクリート打設時に狂いが生じないように細心の注意を払っての工事でした。
鋼台の鉄骨製作精度と、現場でのアンカーセットの精度を合わせるのが、本当に大変でした。
ここを乗り切れば、3階床以上のCLTと梁は あらかじめCLTに組み立てヤードで鋼台・金物等を取り付けているため、
現場での組み立て作業は比較的スムーズで、今回は前面道路が狭く搬入・揚重作業に手間がかかりましたが、ワンフロアー7日~10日のペースで組み上がっていきます。
このスピードはCLTの大きなメリットです。
最上階のPHは軸組工法での施工です。

ぷろぼの福祉ビル新築工事ーCLT製品検査、鋼台等金物製品検査、CLTと鋼台金物組み立てヤード

ぷろぼの福祉ビル新築工事ーCLT製品検査、鋼台等金物製作現場、CLTと鋼台金物組み立てヤード

撮影:浅田設計室

基礎・1階のRCを施工している間に、銘建工業㈱にてCLTを製作、加工しました。
ぷろぼの福祉ビル新築工事では、CLTは軸力・水平力とも負担しています。つまり、柱および耐力壁として使用しています。
一部のCLTは水平力のみ負担させることで、CLTを現しで使用しています。
今回使用するCLTは外周(外壁)に厚み210mm(5層7プライ)を使用し、コア周り短辺方向に厚み120mm(3層4プライ)のものを 2丁背中合わせにして240mmの耐力壁として使用しています。この240mmのCLTを一部現しで使用しました。
CLTはラミナ(t=30)を層ごとに直交させ製作をしていきます。奈良県での建築ということで、今回、このラミナ材はすべて奈良県産のスギ材を使用しました。当初、コストに見合った奈良県産スギ材を供給してくれるところを探すのに苦労しましたが、どうにかご協力いただけるところが見つかり、製作する事ができました。吉野スギ材ということで、ある程度、他の産地のスギ材より、高強度(高ヤング係数)を期待していましたが、使用するラミナをグレーディングした結果、やはり他の産地のスギ材より強度分布がかなりよく、高強度の材であることがわかりました。
建物規模があるため建て方にも時間がかかります。CLTの製作段階では、その間、雨ざらしになることを想定し、保護塗料を塗ります。
CLTの量も相当あります。製品検査で写真で写っている範囲すべてがこのプロジェクトに使用するCLTパネルです。
今回の建築にはCLTを約140m³ 使用しました。梁などのメイン構造部材と合わせると、構造材の木材使用量は約240m³ になります。
羽柄材や下地材、仕上げ材を合わせると、相当な木材使用量になります。
加工されたCLTは奈良県内の組み立てヤードに運ばれ、そこでCLTに取り合う鋼台や金物と接合し、上棟時に現場へ搬出します。
市街地の現場での施工であるため、前面道路も狭く、敷地にも余裕がなく、現場では金物の取付け・組み立てができません。
そこで、このヤードと呼ばれる場所は、上棟、施工をスムーズにするためにはとても重要な組立場となります。
このCLTに取り合う鋼台・金物は奈良市内の鉄骨工場で加工製作されました。とにかく、CLTに対して接合部の精度を出すのが大変で、建築の鉄骨精度ではなく機械工作並の精度が必要でした。鉄骨屋さんには本当に感謝しています。

ぷろぼの福祉ビル新築工事ーCLTの材料特性・材料強度・接合部強度等 の実験

ぷろぼの福祉ビル新築工事ーCLTの材料特性・材料強度・接合部強度等 の実験

撮影:浅田設計室

2016年4月に国土交通省からCLTに関する許容応力度、材料強度、構造計算に関する技術基準等の告示がようやく出されました。
このプロジェクトが始まった2014年初夏の段階ではそういったものが何もなく、ようやくJAS材として認定された程度でした。
このプロジェクトで構造計画・設計(時刻歴応答解析による構造設計)を進めるにあたり、材料特性・材料強度・接合部の強度等を実験で検証・確認する必要がありました。
実験は近畿大学建築学部・村上雅英教授(村上研究室)の力をお借りして、近畿大学の実験施設で行いました。
試験材料、試験体製作は銘建工業(株)にご協力をいただきました。時間が十分ないなか、村上教授の指導のもと構造設計事務所と試行錯誤の上、仕口を決め試験体を作成し、約2か月かけて解析と実験を行いました。
水平に試験体を設置し、徐々に加力していきどの段階の力で割れを生じたり、破断が起こるかを記録し、データー解析していきます。
当然、想定応力以下で破断するとNGとなります。また、割れの入り方を見て、仕口に少し改良を加えたり検証していきます。
もう少し時間があり実験をくり返すことができれば、こうすればよかった、もっと合理的にシンプルにできた との反省は多々ありますが、この限られた時間での実験結果をもとに、「CLTの材料特性、接合部等の構造性能評価及びモデル化の妥当性」について構造評定を受け、構造計画・設計に反映していきました。

ぷろぼの福祉ビル新築工事~CLTを利用した奈良市内木造5階建て福祉ビル~(着工)

昨年の初夏にご依頼を受け、奈良市内で計画していました、木造5階建て・約1000㎡の福祉ビルがいよいよ着工になりました。

CLTを用いた、奈良市市街地中心に計画された障害者の就労移行支援、継続支援等を行う障害者福祉施設です。
5階建ての建物で耐火建築とし、1階をRC造、2~5階を木造1時間耐火で計画。木造部分は、壁・柱としてCLTを使用し軸力及び水平力を負担させ、告示仕様の耐火構造を適用しています。床についてはCLTを用いた耐火告示仕様がないため、木住協の木造軸組床1時間耐火構造を用い、梁材で構成しています。
壁・柱はCLTの告示耐火仕様、床組は木住協認定耐火仕様にて計画する建物は日本初になり、CLTのJAS制定後の初の大型建築となると思われます。
構造解析は構造設計手法が確立されていないため、時刻歴応答解析を実施し構造解析を行いました。それに伴い必要となる仕口・接合部及び耐力等の実験試験につきましては近畿大学で実験を実施し、そのデータを構造設計に反映しています。
外周壁仕口についてはLSBを使用、短辺方向耐力壁につきましては、新たな仕口を検討し使用しています。
1時間耐火ということで、通常はメンブレンでおおわれてCLT耐力壁が隠れてしまいますが、あえて水平力しか負担しない壁を設けることで、一部CLTを現しにできるようにしました。
各フロアはコア以外は1つの空間(ワンルーム)とすることで、施設側が自由に空間を利用できるようにしました。
大きなワンルームとすることは、本来、木造が苦手とするところです。狭小間口での計画のため、敷地いっぱいに建物を計画しています。
よって、設備機器などは屋上に設置する事になりました。トップヘビーになることも木造にとっては不利になります。
これらの課題を一つ一つクリアしていき、できるだけRC造や鉄骨造で、市街地・狭小間口に建物を建てるのと同じような空間を持った建物になるよう、計画いたしました。
本計画は都市部での準防火・防火地域内の最も多く計画されるであろう都市型1時間耐火の施設系及び事務所系建築であり、CLTの普及に伴い、もっともボリュームゾーンとなりえる建築と思われます。
上棟時、竣工時には現場見学会を予定していますので、またお知らせさせていただきます。

CLTとはクロス・ラミネイティド・ティンバー(Cross-Laminated-Timber)の略称で、ひき板の各層を繊維方向が互いに直行するように積層接着したパネルを示す用語です。
今回は奈良県産杉材をラミナ(ひき板)に使用して、CLTを製作します。

高槻荘地域密着型サービス施設~ゆらら~(竣工)

美原荘地域密着型サービス施設(上棟)

撮影:プライズ・山崎浩治

木造3階建、1時間耐火、約1200㎡の福祉施設です。
同じ施主より、別の福祉施設の設計・監理を依頼されていましたので、そのご縁で現場監理を依頼されました。
主な外壁は木住協仕様・大臣認定の窯業系サイディングによる1時間耐火仕様となっており、バルコニ―縦格子は疑似木を使用しています。
床耐火メンブレンは、天井を2重天井とせず、耐火メンブレンがそのまま天井下地になっており、設備・電気関係の取り付け、取り合いに苦労しました。
主な内装仕上げは、床:長尺塩ビシート、壁・天井:ビニールクロス仕上げになっています。

美原荘地域密着型サービス施設~すごうの郷~(竣工)

美原荘地域密着型サービス施設(竣工)

撮影:河合止揚写真事務所

木をたくさん使った施設にしてほしいというご要望からスタートした施設が、ようやく竣工いたしました。
この施設は、木造3階建て、1時間耐火の福祉施設です。
地域密着型ということで、地域に根差した老人福祉施設、木による優しい・安らぎのある空間を目指して計画されました。
木造でこれだけの規模になりますと、工事も大変で、大工さんは工期との戦いで非常にご苦労されていました。
構造材としてカラマツを使用していますが、外装材、内装材にもできるだけ多くの木を使用するようにしました。
1時間耐火ということで構造材は必然的に耐火メンブレンで覆われてしまいます。
そこで、外壁は木住協仕様・大臣認定の板張り仕様を採用し、米杉を横張にし、軒天にも米杉を使用することで、木造らしさを出すようにしました。
内装についても、内装制限と闘いながら、腰壁、天井(一部)には吉野杉を、床にはクリのムクフローリングを使用しました。
建具は使い勝手上支障のないところには木製建具、格子戸などを使用し、極力、ご年配の方が木を感じ、安らげるような空間になるようにしました。
床の耐火は、耐火メンブレンとは別に、天井を2重天井にすることで設備、電気関係が施工しやすいようにしました。
また、床面も耐火メンブレンの上にゴムを敷いて根太を組むことで、少しでも下階への音にも配慮できるように工夫しています。
また、この根太空間は設備関係の配線配管にも利用できました。
仕上げ材でこれだけ大量の板材を使用すると、供給側がなかなか対応できず、かなりの納期の余裕をもって発注をしないと、今の、日本の材木の供給体制ではキビいしいものがありました。
木造1時間耐火で構造材を耐火メンブレンで覆ってしまうのは木造らしくない、そこまでして木造でする必要があるのか、という意見もありますが、構造材が隠れていても、明らかにRC造や鉄骨造とは建物に入った時の印象は違います。
木造はやはり木造で、どこか空気が和らかく温かみを感じます。それが木造の良さなんだと思います。
納期、工期と闘いながら、施工会社、各業種の方々、材料屋さん、そして何よりも大工さんのおかげで、どうにかぎりぎり工期内に完成することができました。
本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。

美原荘地域密着型サービス施設~すごうの郷~(上棟)

美原荘地域密着型サービス施設(上棟)

撮影:浅田設計室

美原荘地域密着型サービス施設の上棟までの様子です。

これだけの規模になると、在来木造のようなわけにはいきません。
部材サイズも大きく、施工手間もかかります。
主要構造部材はカラマツの集成材です。仕口は金属プレートを差し込みドリフトピンで留めていきます。
在来木造のような仕口では、構造耐力が足りません。
このような金属プレートとの仕口がメインの場合は、製材ではなく集成材のほうが適しています。
1時間耐火ということで、建て方時に見えている構造材は、ほとんど耐火メンブレンで隠れてしまいます。
これだけの規模を木造でするのは、手間も時間もかかりますが、それでも、出来上がったときには、RC造や鉄骨造にはない木造の良さは十分、感じることができると思います。

美原荘地域密着型サービス施設~すごうの郷~(着工)

堺市美原に建築すべく、設計を進めてまいりました、地域密着型老人福祉施設ですが、ようやく施工会社も決まり、着工の運びとなりました。
この施設は、延べ床面積約2900㎡、木造軸組み工法3階建て、1時間耐火の建物となります。
さすがにこの規模になりますと、製材を使うわけにはいかず、構造部材は集成材での計画となっています。
木造1時間耐火はメンブレン方式で構造材は耐火材で隠れていますが、基礎以外はすべて木造の骨組みとなっています。
1時間耐火でも、木造構造部材を現しでする方法もありますが、材料が認定となってしまい、とてつもなくコスト高になってしまいます。構造材が現しにならない分、外壁はすべて板張り、内装での木材使用等で、木造らしさを出しています。

木造軸組み工法、1時間耐火など、現場監理は神経を使い、大変になりますが、施工者とともにより良いものが創れるように頑張りたいと思います。

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